細田ゼミ 演習 ミニ・エスノグラフィー作品集(2020)
習慣化する複数信仰―諫早市囲地区の高齢者の聞き取り調査を通して
日本人高齢者の宗教意識や生活の中で宗教がどのように作用しているのかを明らかにするため、長崎県諫早市多良見町囲地区においてインタビュー調査を行った。その結果、調査対象者が主として信仰している仏教に加えて土着化した複数の信仰の存在が明らかになった。またそれぞれの信仰の特性に合わせて上手く折り合いをつけながら願い事や悩み事の解消を行っているが、その一方で宗教的儀礼が形骸化され一日のルーティンと化している現状も示した。(卒業研究では多良見町で神の使いとされるなまずについて調査を行う予定。) (筆者 N.M.、 2020年6月完成)
多良見町にかかる橋に描かれたなまずの絵(筆者撮影)
児童保育施設での英語教育を目的とした英語絵本による読み聞かせは有効か―保育者へのナラティブインタビューからの検証
読み聞かせは、児童保育施設で広く行われている活動だ。近年、英語教育を早期開始する風潮がある中、英語での絵本の読み聞かせも注目されている。実際に一部の先行研究では、英語絵本の読み聞かせが有効な教授法として報告されている。しかし、児童保育施設でも同様の効果が得られるのか。このような問題意識から、「読み聞かせは児童保育施設で実際どのように行われているのか」、そして「英語絵本の読み聞かせはどのような集団に対しても同様の効果が得られるのか」という2点を明らかにするための調査を行った。今回は、現役の保育士へのナラティブインタビューを用いて検証した。 (筆者 A.O.、 2020年6月完成)
読み聞かせ用の絵本(筆者撮影)
先が見えづらい展望―長崎市に留学中の中国人学生に対するインタビュー調査
長崎市内の中国人留学生の将来の展望に関してインタビュー調査を行った。きっかけは、中国人留学生は将来に対して見通しを立てにくいのではないだろうか、と思ったからだ。調査ではその点を明らかにするため、彼らは何を求めて来日し、将来何をする予定なのかについて尋ねた。さらに、それらは社会背景に影響されているのかについても探った。調査の結果、最初の想定は正しいと言え、さらにその背景として、留学が彼らにもたらすプラスの作用や、それに関係する中国社会の考え方についても、先行文献を参照しながら説明した。 (筆者 D.S.、 2020年6月完成)
ネパール人親子の生活から学ぶ異文化適応の鍵とは―在留資格による問題の多様化
外国人労働者の数が日本で増えている中、日本社会は彼らを受け入れる政策が充分に整っているのだろうか。この疑問をきっかけに調査を開始した。先行研究で取り上げられている外国人労働者の事例はどの程度他の外国人労働者にも共通しているのかどうかという点に関し、特に在留資格や国籍の違いに焦点を当てて、長崎のインド料理店で働くネパール人親子を事例とした調査を行った。その結果、就業形態によって外国人労働者の抱える問題が異なる様子や、母国と比較した日本での生活の充実度に対する考えの多様性などが明らかになった。 (筆者 M.S.、 2020年6月完成)
香川県直島におけるキャッシュレス決済の需要と普及―島内各商店の対応状況及び観光客の需要調査
香川県直島で、近年著しく普及しつつあるキャッシュレス決済に関する調査を行った。直島はアートツーリズムの聖地として知られており、例年多くの観光客を惹きつけている。そこで、島内の商店におけるキャッシュレス決済の対応状況と観光客側の需要についてのフィールドワークを実施した。島民への聞き取りを通じて、それぞれの店舗の主たる顧客の特徴や支払いの方法、店主らのキャッシュレス決済に関する考え方を明らかにした。また、現地調査を行ったことで、直島というフィールドの特性についても垣間見ることができた。 (筆者 T.T.、 2020年6月完成)
直島の風景(筆者撮影)